多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明究領域略称:細胞運命制御

組織・研究内容

研究課題名
造血幹細胞ニッチとしての巨核球の機能の解明

田久保 圭誉
研究代表者
田久保 圭誉
慶應義塾大学医学部・専任講師
研究室HPE-mail

研究内容

哺乳類成体の造血の場である骨髄は低酸素環境と非低酸素環境が混在する複雑な組織である。生涯にわたり血液細胞を産生し続けるためには、造血の場である骨髄ニッチ(造血微小環境)で、造血幹細胞が適切に維持されることが必須である。これまでに未分化な造血幹・前駆細胞分画は分化した血球分画に比べてより低酸素環境にいることを明らかにした(BBRC 2007, Cell Stem Cell 2010)。この際、造血幹細胞で低酸素応答の中心的制御因子HIF-1alphaが転写レベルでも蛋白レベルでも高発現しており、HIF-1alphaの量の精密な調節がニッチにいる造血幹細胞の維持に必須であることを明らかにした。さらに、HIF-1alphaによって造血幹細胞の代謝プログラムが維持されていることも見出した(Cell Stem Cell 2013)。
 一方、骨髄ニッチは骨芽細胞、間葉系幹細胞など骨髄血管に隣接する多種の細胞から成る。これら間葉系の細胞と同様に骨髄血管に近接する細胞として、造血幹細胞に由来し、血小板を産生する巨核球がある。古典的に、造血幹細胞から早期に巨核球への分化が観察されること、巨核球と共通のサイトカイン(SCF及びTPO)で維持されることが知られており、造血幹細胞維持と巨核球は強い関連があると考えられている。そこで本研究では、巨核球のニッチ細胞としての役割を解明する。具体的には独自に開発した巨核球誘導システムと、血小板・巨核球特異的、血管内皮特異的、あるいは造血幹細胞特異的にニッチ因子を欠損するマウスを組み合わせて造血幹細胞とニッチの恒常性の維持に巨核球が果たす役割を解明する。

巨核球(megakaryocyte)は造血幹細胞(HSC)から分化して形成され、血小板を放出する。巨核球と造血幹細胞はそれぞれ骨髄の血管内皮細胞(BM sinusoidal endothelia)に近接して存在することが知られているがそれぞれの相互作用は不明である。本研究では巨核球が造血幹細胞ニッチとして果たす役割について解析する。

主な論文

* correspondence
研究代表者
田久保 圭誉

*Takubo K, Nagamatsu G, Kobayashi CI, Nakamura-Ishizu A, Kobayashi H, Ikeda E, Goda N, Rahimi Y, Johnson RS, Soga T, Hirao A, Suematsu M, and *Suda T.
Regulation of glycolysis by Pdk functions as a metabolic checkpoint for cell cycle quiescence in hematopoietic stem cells.
Cell Stem Cell. 12:49-61, 2013

*Takubo K, Goda N, Yamada W, Iriuchishima H, Ikeda E, Kubota Y, Shima H, Johnson RS, Hirao A, Suematsu M, and *Suda T.
Regulation of the HIF-1alpha level is essential for hematopoietic stem cells.
Cell Stem Cell. 7:391-402, 2010

*Takubo K, Ohmura M, Azuma M, Nagamatsu G, Yamada W, Arai F, Hirao A, and *Suda T.
Stem Cell Defects in ATM-deficient Undifferentiated Spermatogonia through DNA Damage-induced Cell Cycle Arrest.
Cell Stem Cell. 2:170-82, 2008

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