多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明究領域略称:細胞運命制御

組織・研究内容

研究課題名
ポリコーム群タンパク質による神経幹細胞の多分化能制限メカニズムの解析

平林 祐介
研究代表者
平林 祐介
東京大学分子細胞生物学研究所 助教
研究室HPE-mail

研究内容

 発生のどのステップの細胞も同じゲノムを持っているが、非常に初期の幹細胞は広範な細胞への多分化能を持ち、発生がより進んでから現れる組織幹細胞の分化能は制限されている。この多分化能の制限にはエピジェネティックな制御が中心的な役割を果たしていると考えられている。大脳皮質神経幹細胞についても、発生が進むにつれ多分化能を失って行く事が示唆されて来た。これまで特定領域研究、若手研究などから交付された研究費により我々はPolycombタンパク質複合体が神経幹細胞の多分化能を発生時期依存的に制限する結果、細胞自律的な神経幹細胞の分化運命転換が起こることを見出した(Hirabayashi et al. Neuron 2009)。しかしながら、Polycombがどのようなメカニズムで発生の時間を幹細胞の分化ポテンシャル制御へと結びつけているのかはほとんど分かっていない。PolycombはヒストンH3 K27トリメチル化(H3K27me3)修飾を介して転写を抑制することが知られるクロマチン制御因子である。そこで本研究では、発生上の時間経過がH3K27me3ドメインにどのような変化を及ぼしているかを明らかにし、またその変化がいかなるメカニズムによって産み出されているのかを明らかにすることを目的とする。Polycombを介した遺伝子発現抑制については近年精力的に研究がなされているが、どのようなメカニズムでH3K27me3修飾されるゲノム上の部位が決定されるのかは多くが未解明のままである。本研究ではPolycombによる抑制の開始を研究する上で非常に有用かつユニークなモデル系であるngn1, fezf2遺伝子座について研究する事で上記の疑問を明らかにする手がかりを得る。

主な論文

* correspondence
研究代表者
平林 祐介

Hirabayashi Y, and *Gotoh Y.
Epigenetic control of neural precursor cell fate during development.
Nat Rev Neurosci. 11: 377-388, 2010.  

Hirabayashi Y, Suzki N, Tsuboi M, Endo TA, Toyoda T, Shinga J, Koseki H, Vidal M and *Gotoh Y.
Polycomb limits the neurogenic competence of neural precursor cells to promote astrogenic fate transition.
Neuron. 63: 600-613, 2009.  

Hirabayashi Y, Itoh Y, Tabata H, Nakajima K, Akiyama T, Masuyama N and *Gotoh Y.
The Wnt-beta-catenin pathway directs neuronal differentiation of cortical neural precursor cells.
Development. 131: 2791-2801, 2004  

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