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2006年9月5日

究極の触媒を見つけ、究極のゴムづくりを目指す研究者

理研知的財産戦略センターに、“究極の触媒を見つけ、究極のゴムづくりを目指す研究者”がいる。エラストマー精密重合研究チームの会田昭二郎 副チームリーダーだ。このチームは、2004年にスタートした、企業と理研が共同で研究を進め研究成果の実用化を目指す“融合的連携研究プログラム”第1期チームの一つである。会田副チームリーダーは触媒の研究を大学時代から続け、今まさに究極のゴムを完成させようと全力を尽くしている。研究対象は、空気中では安定に存在しないため触媒研究の対象になりにくかった、元素番号57~71番の希土類金属を含む錯体(さくたい)。“人と違うことをしよう!”をモットーとする会田副チームリーダーの素顔に迫る。

会田昭二郎副チームリーダー

会田昭二郎 副チームリーダー

知的財産戦略センターエラストマー 精密重合研究チーム

1968年6月14日、広島県生まれ。東京都立西高校から1987年、東京理科大学理工学部へ進学。1997年3月、同大学院理工学研究科博士過程を修了。1998年10月、理化学研究所入所。

1300ccの大型バイクで通勤し、一見研究者には見えない会田昭二郎 副チームリーダー。まず小学生時代のことを尋ねた。「ミョウバンを薬局で買ってきて、コップの中に入れ、そこへ糸を垂らしていると結晶ができてくるんです。面白かったですよ!」と当時を振り返る。高校時代は?「将来のことは全然考えていませんでした」と笑う。その後、大学受験を機に一番好きだった化学の勉強に力を入れ、1987年、東京理科大学へ進学した。入学後はあまり勉強をせずに遊んでいたという会田副チームリーダーが、最も熱中していたのは車。「車の中でもなぜかタイヤに興味がありました。サーキットに走りに行って“タイヤが違うと走りも違うな”と思っていました」と語る。そして、大学3年のときに転機が訪れた。「4年生になるときの研究室配属で、楽なところに応募しましたが落ちてしまい、泣く泣く高分子の研究室に入りました(笑)。高分子の研究は仕事量が多くてきついので、希望者が誰もいなかったんです。でも、そこで人が変わったんですよ。鍛えられましたね」

その後大学院へ進み、1年弱、米国へ留学した。留学先は2005年にノーベル化学賞を受賞したRobert (ロバート)H. Grubbs(グラブス)博士の研究室。そこで現在の研究対象、有機金属錯体に出会うこととなる。帰国後、ゴムメーカーに就職したが、有機金属錯体、中でも誰もゴム研究の対象にしていなかった希土類金属錯体を研究したいとの気持ちから退職し、研究の場を求め1998年10月に理研に入所した。理研では若槻(わかつき)康雄主任研究員(当時)とともに希土類金属錯体を触媒としてゴムをつくる研究に熱中した。そして、2004年10月に発足した“融合的連携研究プログラム”のエラストマー精密重合研究チームの副チームリーダーに就任し、本格的な実用化を目指す計画がスタートした。「企業側からチームリーダーを招聘(しょうへい)し、理研側が副チームリーダーを出すという今までにない研究体制で、基礎研究を応用に結び付けるにはとてもいい制度です。現在、(株)ブリヂストンほか民間1社との共同研究で、実用化を目指しています。必ず成功させますよ」と語る。

会田副チームリーダーが目指している究極のゴムとは、いったいどんなゴムなのか? タイヤで例えると“摩耗しにくく、よく転がる”ゴム。現在、世の中に存在している合成ゴムの分子構造には、「バグ」に例えられる乱れが少量ながら存在する。今までの技術では、この「バグ」を取り除いて分子構造の純度をどんなに高めようとしても、例えば高シスポリブタジエンという種類の合成ゴムでは、純度98.5%程度が限界だった。それを解決する方法を会田副チームリーダーはこう説明する。「希土類金属錯体触媒を使うと、その限界を超えることができます。構造純度を高めることで決定的にゴムの性質が変わるんです。でも、例えば純度99%以上は“つくれないから仕方ない”と誰もがあきらめていました。それをつくり、実用化できたら、どんなにいいものができるだろう……、それが今ならできる! この触媒を使えばできる!」

会田副チームリーダーは最後にこう語った。「私がよく思っていることは“人と違うことをしよう!”ということです。人と違うことには二通りあって、一つはほかの人が“価値を見いだせないからやっていないこと”、もう一つはほかの人が“絶対にできないと思っていること”です」。そして「自分がやった仕事を次の世代を担う子供たちに伝えていけたらいいですね」。“人と違うことをしよう!”をモットーとする会田副チームリーダーの研究室から“究極のゴム”のできる日が楽しみだ。

『理研ニュース』2006年9月号より転載